*正しい姉弟の切愛事情*
「失敗したぁ?」
「……うん」
通学かばんを居間の床に投げ出すと、瑞貴は私の隣に勢いよく沈み込んだ。
ソファが苛立ったように軋んで、視界を小さく揺らす。
「くそっ、イシカワうぜーな」
舌打ちをこぼし、思い立ったように振り返る。
「こうなったら俺が直接――」
「も、もう1回ちゃんと話し合ってくるから――」
慌てて手を振る私を瑞貴は疑わしげに見た。
「ホントにちゃんと言えんの? 一歌がはっきりしないと――」
「言うよ。今度こそ、ちゃんと」
そうじゃないと石川君にも悪い。
小さな罪悪感がちくちく胸を突付いて、私はうつむいた。
瑞貴と気持ちを通わせている状態で、石川君と付き合っていくわけにはいかない。
それは分かってる。
けど、できることなら曖昧なまま逃げてしまいたかった。