*正しい姉弟の切愛事情*
近所にある整形外科の先生は白髪交じりのおじいちゃんだけど、
口調も姿勢もしっかりしていて、この辺りではだいぶ頼りにされている。
「良くなってるね」
手形の蛍光灯みたいなレントゲン写真をペン先で指しながら、先生は威厳に満ちた白眉を柔和に開いた。
「骨がくっついてきてますから、リハビリしてきましょ」
「リハビリ?」
丸椅子に座った瑞貴が首を捻ると、先生は包帯を外してある指に視線を落とした。
日常的にギブスをしていた瑞貴の中指は、太陽を浴びないせいか他の指よりも色が白い。
「ここ、曲げられる?」
そう言って、先生は中指の第一関節に触れる。
「……あれ、曲がんない」
指先に力を入れているらしいけれど、瑞貴の関節は細かく震えただけだった。
「固定して動かさないでいると筋肉が衰えて関節が曲がりにくくなっちゃうからね。リハビリをして少しずつ稼動域を改善していきます」
体育の授業で怪我をして以来、瑞貴は週1回、この病院に通っている。
私は付き添ったり付き添わなかったりだけど、経過はどうやら良好らしい。