*正しい姉弟の切愛事情*
「沢井瑞貴くん、こちらへどうぞ」
診察室の隣の部屋から、青い医療着に身を包んだ若い男の人が瑞貴を呼んだ。
「理学療法士の久保です。よろしく」
爽やかに微笑むその人が瑞貴のリハビリを担当してくれるらしい。
スポーツマンぽく短い髪を立たせた久保さんは、瑞貴に笑いかけた後、私に視線を移した。
「お姉さん? も説明聞きます? これから超音波の気泡で――」
「あ、いえ」
難しい話は良く分からないし、瑞貴も姉同伴なんて恥ずかしいかな。
そう思って首を振った。
「あたしは待合室で待ってます」
「そうですか。10分くらいで終わりますんで」
笑顔を崩さないまま、久保さんは瑞貴を連れてリハビリ室に入っていった。