*正しい姉弟の切愛事情*


なんだか腹立たしかった。

また、そうやって、色気を振り撒いて――


「お父さんがいないときにそうやって慣れちゃったら、いつかボロが出ちゃうかもしれないじゃない」

「出さないよ」


即座に言葉が返ってきて、感情がたかぶった。


「あたしがっ!」


振り向くと、瑞貴は驚いた顔で私を見下ろしていた。


「――あたしが、顔に出ちゃうんだもん」
 

心臓がくやしいくらい響いてる。

 
どうして瑞貴はそんなに簡単に触ったりできるんだろう。
 

私はいちいち動揺して、胸が詰まって、

心臓がもたないよ――
 


悲しいわけじゃないし、むしろ幸せなことなのに、なぜか泣きそうだ。
 

その瞬間、 


「い、一歌」
 

瑞貴にきつく抱きしめられる。

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