*正しい姉弟の切愛事情*
いつも強引に迫ってくるけれど、私が怒る直前のタイミングを見計らって、ああやって離れる。
くやしいくらいあどけない笑みを浮かべて。
そういうふうに、私はいつも丸め込まれてしまう。
年上である姉の立場なんて、あってないようなものだ。
溜息をついていると、不機嫌そうな様子で弟が玄関から戻ってきた。
親指で玄関の方を指し示し「隣人」とだけつぶやく。
どうやら覗き穴で相手を確認して戻ってきたらしい。
瑞貴は隣のおばさんが苦手だ。
玄関に出ると、さっきと同じ格好の奥村さんが目をギラギラさせて佇んでいた。
「あら、一歌ちゃん、出てくるのにちょっと時間かかったわね、どうしたの。あら、あなたちょっと顔が赤いんじゃない? 熱でもあるんじゃないの? 大丈夫?」
いきなり浴びせられた怒涛の台詞。
「あ、あの、大丈夫です」