*正しい姉弟の切愛事情*


自分でも何が大丈夫なのかよく分からないけれど、奥村さんが答えを求めて訊いてくるわけじゃないことは分かってる。

まず笑っていれば問題ない。 
 
ただ、細かな観察眼が、少し怖かった。


出てくるのにちょっと時間がかかったとか、顔が赤いとか――
 

縮こまっている私に微笑み、奥村さんは器を差し出す。 


「煮物をたくさん作ったからもってきたのよ。みんなで食べて」

「あ、ありがとうございます」
 

私も笑みを返すと、彼女は満足した様子で自宅へと戻っていった。



お隣の玄関が閉まる音を聞いてから、私も玄関をくぐってキッチンへと戻る。


人知れず溜息がこぼれた。
 


恐いな……奥村さん。
 
まるで家の中を透かし見られているよう。
 

もし、万が一、あの人に瑞貴とのことがバレたら……。
 


噂はあっというまに広まるんだろう。
 



そうなったら……あたしたちはどうなるのかな……?


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