*正しい姉弟の切愛事情*
その想像は、胸の底に沈めて懸命に忘れようとしていた罪の意識を思い出させる。
それは黒い渦巻状で、解消すべき不安を曖昧にしてる。
瑞貴との関係。
なんとなく、怖くて、なんとなくいけないことだと分かっているのに、何が悪いのかはよく分からない。
だから余計に怖くて、
日常の陰に沈めて、思い出さないようにしてるのに――
得体の知れない闇に呑み込まれそうだと思ったとき、ソファの方から声が聞こえた。
「大丈夫だよ」
見ると、瑞貴が寝転がってテレビに目を向けている。
「大丈夫、って?」
私の問いかけに、弟は画面を見たまま答えた。
「ちゃんと俺、バレないようにするから」
端正な顔がこちらを向く。
「1階ではもう変なことしないから」
「瑞貴……」
まっすぐな目で、
「せっかく手に入れた幸福を、自分から逃すような真似はしない」
弟は低く、つぶやいた。