*正しい姉弟の切愛事情*
知ってるって――
瑞貴の顔がちらつく。
「な、なにを?」
焦っている私を見て、石川君は眉を下げた。
「いちか、さ。1年のときとか結構ヤローに告られてただろ?」
「……え」
話が思いもよらない方向に向かって、口を開けてしまった。
1年のとき、確かに私は何度か告白された。
どんどん進んでいく高校の授業に、ついていくだけで必死だった頃の話だ。
石川君の表情が苦しげに歪む。
「言い寄られても全部断ってたからさ。もしかして男に興味がない子なのかなって思ってた」
それは家事と勉強で、誰かと付き合ってる余裕がなかったから……。
心の中でつぶやき、私は石川君を見上げた。
私だって、本当は恋愛をしてみたいと思ってた。