*正しい姉弟の切愛事情*
ただ隣に座っているだけで満たされるなんて、知らなかった。
恋の力は偉大だと、改めて思う。
お父さんが会社の飲み会で遅い夜、私と瑞貴は並んでベッドサイドに寄りかかっていた。
といっても、弟は座卓に勉強道具を広げてる。
こんなところで集中できるのか疑問だけど、自分で勉強道具を持って私の部屋にやってきた。
私も影響されて数学の宿題を広げてみたけど、全然集中できず結局ファッション雑誌に意識を奪われてる。
それに比べると勉強を続けてる瑞貴はやっぱり凄いな、と思う。
隣に感じる息遣い。
ただ、同じ空気を共有しているだけ。
それでも、嬉しくて、楽しくて、幸せな気持ちになるから不思議だ。
でもそれは、石川君を傷つけて得ている幸福感。
「あたしって打算的……」
人知れずつぶやいた声に瑞貴が反応する。
「何? イシカワのこと気にしてんの」
「……」
座卓に目を落としたまま、形のいい唇から呆れた声を漏らす。