*正しい姉弟の切愛事情*
「別に……顔も身体も性格も、いろいろ総合的に」
「か……」
身体って!
今度はこちらが赤面してしまう。
艶かしい空気が流れそうで焦っていると瑞貴はまっすぐ私を見た。
「一歌は?」
「え?」
「俺のどこがいいの」
反撃とばかりに訊かれ、口をつぐむ。
しばらく考えたあと、
「さぁ……分かんない」
答えると、弟はあからさまに不服そうな顔をした。
「はあ? なんだよそれ、ずりー!」
「だ、だって、本当に分かんないんだもん」
確かに瑞貴は顔もいいし頭だっていい。
でもそこに惹かれたかと言われると、そうじゃない。
もっと私の中の、潜在的な何かが反応したとしか思えない。
たとえば最初に瑞貴とキスをしたあと、石川君のキスに嫌悪感を覚えるようになったみたいに。
だから、
「しいていうなら、唇……?」