*正しい姉弟の切愛事情*


「なんだ、それ」

 
瑞貴が呆れたように言う。


「……さあ、ね」 
 

瑞貴が最初のキスで私に魔法をかけたんでしょ?
 
そう思うくらい、意識してなかったはずの心があっという間に瑞貴色に染まったのは事実だ。


「どうして石川君じゃなくて、瑞貴だったんだろう」 


よりによって――だ。

改めて口にすると、弟は思いがけないことを言った。




「遺伝子、かもよ」

「……え?」
 


瑞貴の澄んだ目が、一瞬、遠くを映し出す。


「母さんが、言ってた」


その言葉に思い出される太陽の人。



――お母さん。



7年前に亡くなったとき、瑞貴はまだ8歳だった。 


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