*正しい姉弟の切愛事情*
「俺と母さん、ずっと2人だったけど、言い寄ってくる男は結構いたらしいよ。でも、絶対に結婚はしなかった」
シングルマザーだったお母さんは確かに美人だったし、若かった。
太陽みたいな笑顔を思い出して、胸が震える。
そんなお母さんとそっくりな目元を和らげ、瑞貴は続けた。
「――それなのに、父さんとはすぐ結婚を決めた」
「え、そうなんだ」
初めて知った事実に驚いた。
お父さんは優しいけれど、特段見た目がいいというわけでもなく、普通の人だ。
むしろ地味な方かもしれない。
年齢だって、お母さんより10歳も年上だった。
20代で若くて綺麗で言い寄る男の人もいたのに、30代の地味なお父さんを選んだ理由は……?
「母さんに、なんでって訊いたことがある。どうして父さんとは結婚をしたのかって」
瑞貴の透明な声に、お母さんの声が被さるみたいだった。