*正しい姉弟の切愛事情*
「――遺伝子で惹かれ合ったのよ――て、言ってた」
「遺伝子……?」
胸の奥で、小さな粒子が反応するみたいに弾ける。
「まあ、聞いたときは遺伝子の意味がわかんなくて、運命みたいなもんかって、思ってたけど」
腑に落ちるって、こういうことを言うのかもしれない。
瑞貴の言葉はなんの引っ掛かりもなく、すっと私の心に入ってくる。
「そんな父さんと母さんの、それぞれの血を引く俺たちが惹かれあうのは、当然のことかもしれないよ」
空気みたいに自然に、瑞貴の唇が私に触れる。
まるでお互い求め合っていたみたいに。
欠けていたピースがぴったりとはまったみたいに。
柔らかで、温かで、心が満たされるキス。
私と瑞貴の惹かれあう想いが遺伝子によるものなら、
姉と弟として出会ったことも何かの運命なのかもしれない。
……それがいいことなのか、悪いことなのかは分からないけれど。
すすむべき道の果ては、濃い霧に覆われていて見渡せない。