*正しい姉弟の切愛事情*
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放課後、石川君は友達と用事があるらしく、私は友達のユリと買い物に行った。
お気に入りの雑貨ショップで色とりどりの可愛い小物に癒される。
勉強と家事と恋愛に追われる私にとって、貴重な休息時間だ。
「今日は早く帰んなくていいの?」
石川君に似合いそうなお弁当箱を物色してると、背後から優しい声で訊ねられた。
私の横にちょこんと座り、肩までの品のいい茶髪を揺らしながら、ユリがほわりと微笑む。
「うん、今日は弟塾だし、夕飯は遅めで平気だから」
「そっか。瑞貴くん、今年受験だっけ」
中学から一緒のユリは何度かうちに遊びに来たことがあって、瑞貴とは幾度となく顔を合わせている。
そして何故か彼女の中で弟の印象はかなり好いらしい。
「相変わらず可愛い? 瑞貴くん」
全ての邪気を吸い取るような笑顔を見せる。
その混じりけのない笑みに対して、私はしかめ面のまま大げさに首を振って応えた。