*正しい姉弟の切愛事情*
「それがもーぜんっぜん可愛くないの! 微笑ましく見守っていられのたは中1くらいまでだよ」
瑞貴の低くなった声や成長した身体つきは、もはや可愛いと形容できるレベルのものじゃなかった。
身長も抜かれてしまったし、力もきっと私より強いに違いない。
「ケンカしたら多分負ける」
私の言葉にユリは眉を下げてクスクスと笑った。
「一歌んとこって、そんな激しい姉弟喧嘩するの?」
「えっ? あー…そんな乱闘みたいなことにはならないけど……」
「瑞貴くん優しいから、さすがに手は出してこないでしょ」
黒目がちの大きな眼。
癒しオーラたっぷりのユリが少し微笑むだけで、その一帯は瞬く間に華やぐ。
負の感情が浄化されて、風船からふしゅうと空気が抜けるように、自分の毒気を抜かれてしまう。
「うん、まぁ、ちょっと生意気なくらいだからいいんだけどね」
口を尖らせながら言うと、ユリはまた可笑しそうに微笑んだ。