*正しい姉弟の切愛事情*
「すべてを、分かってる……?」
思いがけない言葉にラグの隅で小さくなってる彼女を見る。
ユリはわずかに顔を上げて、まっすぐ壁を見つめていた。
その横顔は、白くて、綺麗で、どこか拒絶的だった。
話しかけないで、と雰囲気で語ってるみたいに。
「ぜーんぶ、分かってんのよ、この子。分かった上で容認してんの」
「彼氏の、浮気を……?」
エリカちゃんは居間の片隅を見ながらつぶやく。
「そもそも彼氏じゃないって、言い張ってるけど」
そんな言葉にユリの普段の態度が甦る。
私が司藤大地をユリの『彼氏』と表現するのに対して、ユリはしつこいくらい「彼氏ってわけじゃ……」と濁していた。
司藤大地が、他の女の子に手を出してると知っていて。
いくら公にカップルのように見られていても、実際はユリ自身も、たくさんいる女の子のひとりに過ぎないって、
自分で、そう思ってたの――?