*正しい姉弟の切愛事情*
「放っておけるわけないでしょ! 高校生のうちからそんな男に引っかかって――傷付くのはあんたなのよ!」
「いいの! それでもいい! 大丈夫だから、放っておいて!」
こちらを向かないまま、ユリは小さな背中で叫ぶ。
私は何も言葉にできなかった。
いろんなことが、一度に頭を巡って混乱する。
司藤大地に対しての幻滅。
そんな男と分かっていて付き合ってるユリ。
そのことに、まったく気付けなかった自分。
いったいどんな言葉が今の場面に相応しいのか、全然分からない。
ただ、激情をぶつけあう姉妹を見守ることしかできない。
「お姉ちゃんには関係ないでしょ! 放っておいてよ! あたしがいいって言ってるんだから――」
「だったらなんで毎晩泣くのよ!」
エリカちゃんの怒声に、ユリの顔が真っ赤に染まった。
痛いところを突かれたというように、その表情がこわばる。