*正しい姉弟の切愛事情*
「それでもいいなんて言うなら部屋で泣かないでよ! なんなのよ! 悲劇のヒロイン気取りなわけ!?」
ユリは唇を結んだ。
真っ黒の大きな目が、悔しげに歪む。
「口先だけで大丈夫って言ったって、気持ちが全然大丈夫じゃないんじゃない!」
エリカちゃんの声が余韻を残して消え去る。
はあと息を吸い込む姉を妹は唇を噛んだまま睨みつけた。
もともと眼力が強いのに、潤んでるせいで微かに光ってさえ見える。
「だって……しょうがないじゃない」
ユリの声はいつもふんわりとしてるのに、今のそれは重く水分を含んでいるみたいに水っぽい。