*正しい姉弟の切愛事情*
嗚咽を漏らして泣き崩れる彼女を、エリカちゃんは困った表情で見つめていた。
居間には時計の音と細い泣き声が絡み合った、悲しいリズムが漂ってる。
やがて、長い溜息が落とされた。
「はあ―――もう、……分かったわよ」
片手で頭を掻き毟り、エリカちゃんは涙に濡れた妹の顔を見つめた。
「盲目な恋――なんて、ほんとは大反対なんだけど」
エリカちゃんの主義はいい恋愛をすることだ。
――いい恋愛は人を成長させる
口癖のように言っていたその意味を、私もユリもまだきっと分かってない。
「そんなに言い張るなら、貫けばいいよ」
言葉自体は突き放しているようだけど、エリカちゃんの表情は冷たくはなかった。
美しく悲しげな顔はユリを本気で心配してる。
「妻子持ちとの不倫とかだったらもっと全力で止めるけどね。あんたの場合は誰かに迷惑をかけるわけじゃないし」
「――……」
その言葉は、なんの前触れもなく私の心臓を突いた。