*正しい姉弟の切愛事情*
「ユリ」
階段を下りようとしたところで背後から声がかかった。
ユリと一緒に振り向いた瞬間、美麗な顔が目に入る。
「司藤くん……」
バスケ部エースの王子様は涼やかな微笑を浮かべて彼女の手をとった。
「今日は練習早めに終わるから、ちょっと待っててくれない?」
「あ……うん」
私の方をちらりと見てからユリは頷く。
司藤大地……。
その正体を知ってしまってから、なんとなく近づきがたくなった。
もともとそんなに話したこともないけれど。
私の視線が不審だったのか、彼はこちらを向いて緩く微笑む。
「なに? 沢井」
「う、ううん。別に」
まるで邪気のない表情に、少しだけ焦ってしまう。
この顔だけ見てると、ユリを泣かせてる遊び人だとはとても思えない。