*正しい姉弟の切愛事情*
その日の夜、瑞貴より早く帰ってきたお父さんと、2人で夕飯を食べた。食卓には料理とともに缶ビールが並ぶ。
「うまいなこの煮物。また料理が上手くなったんじゃないか?」
「え、そう?」
「あぁ。酒がすすむよ」
「もー、あんまり飲みすぎないでよね」
「あはは、本当にしっかりしてるなぁ一歌は」
赤い顔を優しげに崩して、お父さんは時計を見た。
「瑞貴はまだ帰らないのか?」
時計の針はまもなく22時を差そうとしてる。
「今日塾だから。でもそろそろ帰ってくるんじゃないかな」
「そうか」
コップに注いだビールを呷ると、
「何か変わったこととか、困ったことはないか? あいつ、俺には何にも言わないから」
そう言って笑う赤い顔は、少し淋しそうで。
「……年頃の男の子なんて、そんなもんだよ、きっと」