*正しい姉弟の切愛事情*
司藤大地に連れられていく華奢な背中を見送っていると、肩にかけたカバンの中で携帯が震えた。
『そろそろ学校終わる? 今、病院。迎えに来れない?』
画面に瑞貴の文字が並んでる。
弟が通っている整形外科は高校から近く、下校途中にある。
『わかった。今から行くね』
そう返信して駐輪場に向かった。
自転車の鍵を外し、歩いて裏門をくぐる。
学校の敷地を出たところで自転車にまたがろうとしたとき、背後から呼びかけられた。
「一歌」
聞き馴染んだその声に、心臓が震える。
おそるおそる振り返った先に、長身の彼が佇んでいた。
「石川君……」
髪を少し切ったらしく、ふわふわだった頭は少しだけボリュームダウンしてる。
向き合って話をするのは久しぶりだった。
別れをはっきり告げたものの、石川君自身は納得していない状況で、だからといって私にはどうすることもできず、
曖昧な関係のままここまで流れてきてしまっていた。