*正しい姉弟の切愛事情*
「明日から休み、だな」
「……うん」
木漏れ日が作り出す複雑な模様が白いシャツの上で揺れてる。
懸命に笑みを浮かべながら、石川君は私を見下ろした。
「休み中……にさ。どっか、遊びにいかね?」
きっといろいろと悩んだ末の言葉だったに違いないけれど。
応えるわけにはいかない。
「……ごめんなさい。石川君と出かけたりとか、もうできないから……」
もうできない、なんて我ながら傲慢だ。
いつも誘いを断ってばかりで、石川君とでかけたことなんて、ほとんどなかったくせに。
「話、したいんだよ」
少しだけ語調を強めた彼に「ごめん」とだけ答える。
「あたし、これから用事があるから……。じゃあ」
そう言って、自転車にまたがった。
まだじっと視線を送ってくる彼を背中に感じながら、私はゆっくりとペダルをこぎだした。