*正しい姉弟の切愛事情*


瑞貴がいる病院までは高校の裏門から行くと近い。
 
一度だけ角を曲がり、あとはまっすぐ50メートルも行くと病院の看板が見えてくる。
 


入り口前に人影が2つ並んでいた。

制服姿の瑞貴と青い医療着の――


「や、どうも」
 

自転車を停める私に快活な笑顔を向けたのは、瑞貴のリハビリを担当してくれている男の人だった。
 
短い髪がつんつん空に向かって立っている、爽やかな風貌の理学療法士。
 

名前は確か――


「久保です」
 

満面の笑みを浮かべる彼と対照的に、瑞貴は思い切り眉をゆがめる。


「ちゃっかり自己紹介してんじゃねーよ」
 

あ、不機嫌だ。
 

年上の人に対してなんて口の利き方を――と思ったけれど、久保さんはまったく気にした様子もなく瑞貴の頭をがしがしと掻いた。


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