*正しい姉弟の切愛事情*


「まあまあ、いいじゃないの! あ、学校帰りですか、 瑞貴君のお姉さんの――えっと……」

「あ、一歌です。弟がいつもお世話に――」

「いやいや、そういう堅いのはいいっすから。今日はもう仕事中じゃないし」

「アホ久保」


頭に置かれていた手を振り払いながら、瑞貴がつぶやく。


「お、言ったなー?」


久保さんは笑顔のまま瑞貴の肩をばしばしと叩いた。


「いってーよ馬鹿力!」

「はっはっは!」

「……」
 

なんていうか、激しく明るい人だ。
 
瑞貴が吐く毒をものともせず、久保さんは爽やかな笑顔を辺りに振りまいてる。


「今日の診療はもう終わりで、瑞貴君が最後だったんですよー」
 

そう言うと、片目をバチンとつぶってみせる。


「よければこの後、御飯でも行きません? なんて」

「えっ」
 

< 313 / 428 >

この作品をシェア

pagetop