*正しい姉弟の切愛事情*
「行くわけないだろっ」
唐突な誘いに驚いていると、瑞貴は久保さんの体を左手で押しのけようとした。
「おっと」
久保さんは瑞貴の攻撃をひらりとかわしその手を押さえ込む。
包帯が巻かれた中指をぐっと覆った。
「そう、その調子! ほらもっと力入れて!」
「いて、いてぇよ!」
「うんうん、だいぶ曲がるようになってるな。もうちょっとだ」
「放せ! バカ久保!」
突然始まった野外リハビリに呆然としてしまう。
ていうか、久保さんすごい。
瑞貴を完璧に子ども扱いしてる。
大人の余裕に唖然としていると、瑞貴が苛立たしげに私の自転車をとった。