*正しい姉弟の切愛事情*


「行くわけないだろっ」


唐突な誘いに驚いていると、瑞貴は久保さんの体を左手で押しのけようとした。 


「おっと」
 

久保さんは瑞貴の攻撃をひらりとかわしその手を押さえ込む。
 
包帯が巻かれた中指をぐっと覆った。


「そう、その調子! ほらもっと力入れて!」

「いて、いてぇよ!」

「うんうん、だいぶ曲がるようになってるな。もうちょっとだ」

「放せ! バカ久保!」


突然始まった野外リハビリに呆然としてしまう。
 


ていうか、久保さんすごい。
 
瑞貴を完璧に子ども扱いしてる。
 


大人の余裕に唖然としていると、瑞貴が苛立たしげに私の自転車をとった。


< 314 / 428 >

この作品をシェア

pagetop