*正しい姉弟の切愛事情*
フォローするようにそう言ってみたけれど、実際、私自身、瑞貴をよく分かってるわけじゃない。
でも、仕事で疲れてるお父さんに、余計な心配はかけたくなかった。
そのとき、玄関の方から扉を開ける音が聞こえた。
「ただいま」
瑞貴はパックのジュースを手に持ったまま居間を横切ろうとする。
それを見て、お父さんが目を細めた。
「お帰り。遅くまで勉強大変だな」
「あ、おかえり」
年頃の息子はストローをくわえたまま、ぶっきら棒に返事をする。
そのまま2階に上がっていこうとする背中に慌てて声をかけた。
「瑞貴、夜食何時に持ってけばいい?」
「テキトーでいい」
振り返りもせずに答え、階上へと消えていく。
「……反抗期か? さみしいなぁ」
置いてきぼりにされた子犬のように、お父さんの顔は悲しげだった。