*正しい姉弟の切愛事情*
◇
石川君の言葉に貫かれて、私の心は一部が麻痺してしまったようだった。
瑞貴と一緒に帰宅したはずなのに、何を話したのか覚えてない。
ただ黙々と台所に立って、夕飯を作って……。
もしかしたら私は、いつか脳が機能しなくなっても料理だけは続けるのかもしれない。
そう思うくらい、
『家族のためにごはんを作る行為』は、
私にとって大事な意味があった。
「ごちそうさま」
食事を早々に済ませ、自分が使った食器を流しに重ねる。
「食べ終わったらそのままにしといて。後で片付けるから」
そう言って階段に向かうと、お父さんの声が背中を撫でた。
「なんだ一歌、具合でも悪いのか?」
「ううん、明日の課題が残ってるからやっちゃおうと思って」
瑞貴の方を見ないまま、2階に上がり自室に入る。
そのままベッドになだれ込んだ。