*正しい姉弟の切愛事情*
明日の課題なんて、あるわけないじゃない。
夏休みなんだから。
部屋の中は蒸し暑い。
肌は汗で湿り、布団にべたべたと貼り付いて気持ち悪かった。
それでも起き上がる気になれない。
――寄るな! 気持ちわりぃ!――
そうだ、
気持ち悪いことなんだ、世間的には……。
石川君の嫌悪に満ちた目が、まぶたに甦る。
世間の人は、あたしたちが義姉弟だなんて知らない。
同じ沢井の人間として、姉弟として、家族としてしか見てない。
同じ家で育ってきた姉弟が想い合うということ自体に嫌悪を抱く人だっている。
たとえ血が繋がってなくたって、モラルに反することなんだ。
その証拠に、あたしたちは手を繋いで歩くことすらできないじゃない。
もし、妙なうわさが立ってここに住めなくなったら――
誰よりも、お父さんに迷惑がかかる。