*正しい姉弟の切愛事情*
宛名は沢井瑞貴 様
差出人は江崎そのみ
女の子の可愛い文字で書かれた名前が、花柄をバックに色づいている。
――ふぅん、
『そのみ』ちゃん……ね。
うちの弟にラブレターを出したのは、いったいどんな女の子なんだろう。
と、背後で瑞貴が身じろぐ気配がした。
慌てて手紙をボードに戻し、振り返る。
「ん……」
こちらを向いたままの瑞貴がぼんやりと目を開けた。
そして、寝ぼけまなこのまま私を見る。
「一歌……?」
やば、怒られる――?
そう思った瞬間、瑞貴は思いがけない行動を取った。