*正しい姉弟の切愛事情*
唖然とする私の横で、エリカちゃんは厳しい表情を緩めない。
弟は苛立ちをあらわにし、獣のように叫ぶ。
「これは俺と一歌の問題だ! お前には関係ない!」
「じゃあその一歌をよく見てみなさいよ!」
高い声に勢いを奪われ瑞貴が口を結ぶ。
眉を歪めたまま、私を見る。
「一歌が幸福そうに見える?」
エリカちゃんの声を聞きながら、私は瑞貴と目を合わせた。
「あんたと付き合ってて、なんの悩みも心配事もない幸せな表情をしてるっていえるの!?」
「……」
返す言葉が見つからないのか、口をつぐんだまま弟はじっと私を見つめている。
視線を逸らしたい衝動を堪え、私もまっすぐ見つめ返した。