*正しい姉弟の切愛事情*
もうドアに『無断入室禁止』の張り紙は貼ってない。
それなのに、瑞貴の部屋は堅く閉ざされているように思えた。
ノックをしても返事はなく、回したドアノブは心なしか重たい。
ドアを開けると、正面に背中が見えた。
机に向かってるようだけど、頬杖をつき、指先でトントンとノートを叩いてる。
集中できてないのかな……?
「瑞貴」
声をかけると、細い背中がびくりと震えた。
ヘッドフォンを外して振り向いた弟の表情は、冷たい。
「……何?」
拒絶されてる。
一瞬、怯んでしまった。
でも、胸の前でぎゅっと右手を握り締めて、用意してきた言葉を告げる――
「せ、セックス……しよう、瑞貴」
目を逸らさずまっすぐ言うと、瑞貴は眉をひそめたまま固まった。