*正しい姉弟の切愛事情*



不意にぽたりと何かが落ちてきた。


まぶたを開けると苦しげな瑞貴の表情が目に入って、透明な雫がぽたぽたと降り注ぐ。



「瑞貴……?」
 


手を伸ばし、白い頬に触れる。



「泣いてるの……?」
 


溢れた涙の粒は、私の頬で砕けて流れ落ちた。

瑞貴の目元を濡らし、次々とこぼれてくる。
 


身体を繋げたまま、声も上げず、弟は涙を落としてる。





――苦しいんだね、瑞貴。 


お互いの体温はあたたかくて、触れ合った部分からは幸せを感じるのに。 


私を見下ろす真っ黒な瞳は、切なさに滲んでる。



「――――い」



胸が、痛い。 




「一、歌……」




掠れた声に、私の目にも涙がこみ上げた。







だってこれは、別れの契り。





離れるために繋がる行為――――



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