*正しい姉弟の切愛事情*
デスクスタンドの灯とか、
触れた手の温度とか、
瑞貴の部屋の匂いとか――
昨日の情景がまざまざと浮かび上がってくる。
「一歌? どうかした?」
隣からユリに覗き込まれ、あわてて手を振る。
「な、なんでもない」
ここ1、2年くらい、瑞貴は反抗期だか受験のストレスだかでずっとつんけんしてた。
それなのに、急にあんなことするから……。
いくら寝ぼけてたにしても、普段とのギャップがありすぎて心がうまく事態を処理できない。