*正しい姉弟の切愛事情*
そこに立っていたのはひとりの男子生徒だった。
周囲の女子生徒がさりげなく視線を送るほど秀麗な顔つきで、
照明に照らされた茶髪は明るいオレンジ色に透けてる。
「え、司藤くん」
ユリが真ん丸の目をさらに見開く。
「今日はお昼、練習あるんじゃ――」
「なくなったから、いつもんとこ、来て」
爽やかに微笑むと、彼はユリの頭をいちど撫でてから購買部を出ていく。
スタスタと歩いていく背中を見送り、ユリはあっけにとられたような顔で私に向き直った。
「ごめん一歌……」
「呼ばれちゃいましたね、彼氏に」
「か、彼氏ってわけじゃ」
「はいはい」
去っていった美男子――司藤大地(しとう だいち)――は、
バスケ部のエースで、ルックスが上の上で、女子たちの憧れの的だ。
ユリはそんな彼の寵愛を受けている。