*正しい姉弟の切愛事情*
手の甲に受けた思いがけない温度――
大通りの向こう側、ガードレールに守られた歩行者専用の通路。
そこを、制服姿の瑞貴が歩いていた。
学校帰りらしき弟の隣を、同じ中学の制服を着た女の子が歩いている。
初々しいカップルみたいに、不器用に笑い合いながら本屋に入っていくふたり。
なんだ。と、思った。
なんだ、そっか。
こわばっていた身体がふっと緩む。
それと同時に、一瞬だけ、体の中心を、空虚な風が通り抜けた気がした。