*正しい姉弟の切愛事情*
◇
テーブルに並んだ三つのお弁当箱にそれぞれ卵焼きを詰めていく。
自分のと、お父さんのと、このあいだ買ったばかりの黒いお弁当箱。
昨日と違ってぐっすり眠れた私は、いつも通り6時のアラームで起床し、朝食とお弁当の支度に取り掛かっていた。
「おはよう一歌」
「あ、お父さんおはよう」
寝室からグレーのスーツ姿で出てくると、お父さんは食卓の椅子にビジネスバッグを置いた
それを見て私はテレビの時計に目を移す。
「あれ、もう会社行くの? 朝ごはんは?」
「悪い、今日は早めに行くんだ。朝飯はいいよ」
「そうなんだ。あ、待って。お弁当すぐできるから」
お父さんのものだけ先におかずを詰めてお弁当を完成させ、専用の袋に入れて手渡した。
「はい」
「お、ありがとう。じゃあ行ってくるな」
「いってらっしゃい」
その場で見送ってから再びシンクに向き直る。