*正しい姉弟の切愛事情*

 ◇

テーブルに並んだ三つのお弁当箱にそれぞれ卵焼きを詰めていく。


自分のと、お父さんのと、このあいだ買ったばかりの黒いお弁当箱。


昨日と違ってぐっすり眠れた私は、いつも通り6時のアラームで起床し、朝食とお弁当の支度に取り掛かっていた。


「おはよう一歌」

「あ、お父さんおはよう」


寝室からグレーのスーツ姿で出てくると、お父さんは食卓の椅子にビジネスバッグを置いた

それを見て私はテレビの時計に目を移す。  


「あれ、もう会社行くの? 朝ごはんは?」

「悪い、今日は早めに行くんだ。朝飯はいいよ」

「そうなんだ。あ、待って。お弁当すぐできるから」


お父さんのものだけ先におかずを詰めてお弁当を完成させ、専用の袋に入れて手渡した。


「はい」

「お、ありがとう。じゃあ行ってくるな」

「いってらっしゃい」


その場で見送ってから再びシンクに向き直る。


< 58 / 428 >

この作品をシェア

pagetop