*正しい姉弟の切愛事情*
卵焼き、唐揚げ、マカロニサラダにブロッコリーの和え物。
今日のお弁当はいつもより少しだけ手が込んでる。
石川君にはじめて作るお弁当だから、つい気合が入ってしまった。
気に入ってもらえるといいな。
きらきらした恋愛をするために、さりげなく料理のアピール。
なんて。
洗い物をしながら自分のあざとさに笑っていると、テレビの情報番組が7時半を告げた。
階段を下りる足音が響いてくる。
「はよ」
「おはよ瑞貴」
起きぬけの寝癖がついたままの頭で、弟はふらふらと冷蔵庫に近づいていく。
そのまま牛乳パックを取り出して口をつけた。
「あ、また! コップ使ってって言ってるのに」
口にした小言は流されてしまう。
それは毎朝の光景だった。
けれど、瑞貴はそこでいつもと違う言葉を発した。
「あれ」
「ん?」
低い声に誘われるように目を向けると、弟はテーブルの傍らに立って並んだお弁当箱を見下ろしていた。