*正しい姉弟の切愛事情*


それはいつものように3人で夕飯を食べているときだった。


私は台所側に座り、その正面にお父さん、その隣に瑞貴が座るというのが定位置で、


「うまいなぁ、この煮つけ」 
 

お皿にのったカレイをきれいにほぐしながら、お父さんはメガネの奥の目を細めた。


「一歌、また料理の腕を上げたんじゃないか?」

「やだな、このあいだも同じようなこと言ってたよ」
 

私が笑うとお父さんは少しやつれた顔を小さく振って隣の瑞貴を見た。


「いやいや、本当に。なあ、瑞貴もそう思うだろ?」


父親が呼びかけても瑞貴は茶碗を手にしたままテレビの方を向いていて、こちらの話を聞いてるんだか聞いてないんだか、一切反応しない。
 

そんな不肖の息子を叱るでもなく、お父さんは優しく微笑みながら私に向き直った。


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