*正しい姉弟の切愛事情*
停めたはずの自転車が塀に斜めに倒れかかり、浮いた後輪がカラカラと空回りしている。
その傍らには、白シャツと千鳥格子のズボンに斜めバッグを掛けた――
「人ンちの前で盛(サカ)ってんじゃねーよサル!」
悪意たっぷりに発せられた言葉にギョッとし、隣で棒立ちになってる石川君を見上げる。
その顔は案の定、気色ばんでいた。
「あぁ? なんだこのガキ――」
言いながら詰め寄ろうとする石川君の前に、私は慌てて立ちふさがった。
「ご、ごめんなさい! これ、弟なの!」
私の必死の言葉に、石川君の険しく歪んだ眉がぴくりと動く。
「瑞貴(みずき)! 謝んなさい!」
声を荒げた私をフンと鼻先であしらい、弟は横を通り抜けて家へと入っていく。
それを呆然と見ている石川君に、もういちど謝った。