*正しい姉弟の切愛事情*
お風呂はいつも私が一番最後だ。
テレビドラマを流しながら夕飯の後片付けをして、明日のためにお米をといで、炊飯器のタイマーをセットして…。
こまごまと動いた後に入浴してから自室に上がると、だいたい23時半くらいになっている。
パジャマ姿で濡れた髪を乾かしていると、不意にノックの音が室内を走った。
ドライヤーを止めてドアに目をやると、向こう側から声が聞こえる。
「一歌、ちょっと、いい?」
下がりきっていない透明な低音に、心臓が騒ぎはじめる。
「ど、どうぞ」
答えると、鍵のついていないドアがゆっくりと開かれて、スウェット姿の瑞貴が入ってきた。
その目はまっすぐ私に向けられているけれど、夕食時のような冷たさはない。
「……どうしたの?」
私はラグマットに座ったまま、内心動揺していることを悟られないように笑みを作った。
そんな姉を黙って見下ろし、弟は形のいい唇を開く。