【完】隣の家のオオカミさん
髪をあげたいんだけどあげられない。
「……あぁ、ね。そういうことね」
ひんやりと冷たい指の先が首元に触れ、勢いよく横に顔を向けた。
にっと意地悪そうに笑みを浮かべる千絵を見つめる。
「おめでとう。日向子たちもやっとか」
「ま、待って待って。千絵、わたしの話も聞こうね?」
なんか勘違いしちゃってるよね?
「だって、それキスマークでしょ」
大講義室に入ったのと同時にそんなことを平然と言う千絵。
近くに座っていた人達の視線が痛い。
痛いほどに突き刺さってる。
声が大きいよ、千絵ってば!