【完】隣の家のオオカミさん
「え……」と声を漏らした大上くんにわたしの中にあるモヤモヤが濃くなってゆく。
少しの沈黙が流れる。
ごめんね、と謝ろうとしたとき
電話の向こうで微かに聞こえてきた声に耳を疑った。
───ごめん、日向子
いつかの夢に出てきたあの言葉が頭をよぎる。
違う。違うよね。
あれはただの夢だもん。
意味なんてない。
それにあれは誰が言ったのか分かんない。
きっと大上くんじゃないよ。
「大上くん……?」
『ん?』
耳に届く心地い声。
不思議だな。
大上くんは今ここにいないのにこんなにも近くに感じるんだね。
電話だけじゃ嫌だよ。
側にいてほしいって思っちゃう。
今すぐ会いたいって……
「大上くん……なんで?」