【完】隣の家のオオカミさん
「おーいー、うちの子に手出さないでくれる」
声の主の方へとわたし達は同時に顔を向けた。
いつの間にか戻ってきていた洸汰さんがニコニコとしながら立っている。
「手なんて出すわけねーだろ。ただ話しかけただけだっての」
「おまえもう酔ってんじゃねーの。ほら、日向子ちゃんから離れて離れて」
しっしっと手を動かして追い払う洸汰さんと渋々自分の席へ戻る男の人。
二人のやりとりを見ていると、なんだか笑いがこみ上げてくる。
「も、もう一回笑って!」
「えっ?」
男の人は目を丸くさせ、身を乗り出してもう一回、とせがんでくる。
な、なにをそんなに驚いているの?
洸汰さんも驚いたふうにわたしの顔をまじまじと見てるし。