【完】隣の家のオオカミさん
「ん……や、大丈夫。二人して寝過ごしたら嫌でしょ」
いや、あの。わたし寝ませんよ。ちゃんと起きてますから。
「あ、じゃあなんか話でもしようよ。そうせれば眠くなくなるから」
話ってなにを話せばいいのよ。
黙ってその横顔を見つめているとふいに洸汰さんが視線を少しだけこちらに動かした。
「日向子ちゃんが話題提供して」
「え、わたしですか。えぇ~っ……」
楽しい話なんてそんなの持ってないよ。
ネタがないぞ。
ぎゅっと握り締めたかじかんでいる手に視線を落とす。
んん……どうしようか。このままじゃわたしまで寝ちゃそう。
電車の中、暖かいんだもん。