【完】隣の家のオオカミさん
「じゃあ、わたし降りますね」
少し微笑んだ洸汰さんを見てからわたしはホームへと降りた。
なにかが足りない。
心が満たされていない。
寂しいって、ふと思ってしまう。
名前を呼べば返事をしてくれて
いつもそっちから手を繋いでくれて。
自分から離れていったのに寂しいと思うのはダメだ。
「寒いなぁー…」
吐き出された白い息は夜空へと消えていく。
こんな寒い日にはお風呂でまったりするのが一番だよね。
コートのポケットの中に入れた手をぎゅっと握りしめ帰路につく。
ひとりでちゃんと帰れる。
ひとりでちゃんと歩いていける。
───……うん。大丈夫だよ。