【完】隣の家のオオカミさん
階段を下りてしまった大上くんは花壇付近に立っていてわたしのことを見上げていた。
階段の柵に手を置いて下を覗く。
少し張り上げた声が冷たい空気を振動させる。
この胸の高鳴りを止めなくては。
「俺たち、友達になろう」
「……へ…?」
瞬きすることも呼吸をすることも忘れてしまったかのように
「別れたからってさ、気まずくなる必要ねぇじゃん。だから…」
大上くんは一拍、間を置いた。
言葉ひとつひとつを聞き落とさないように意識を集中させる。
「うんっ……友達だよ!」
冬の新しい空気を思い切り吸い込んでわたしは叫んだ───。