【完】隣の家のオオカミさん
「……これ、あれだよな」
やっぱりフタ取れちゃった。
箱を見つめる大上くんのその横顔を私は見つめていた。
捨てろ、なんて言わないで。
大事な思い出なんだもん。
「おー、懐かしいなー」
「ん……懐かしいよね」
まだ金色に輝いているボタンを大上くんは箱の中から取り出すと私に見せてきた。
あぁ、思い出しちゃうな。
卒業式の日のこと。
「すげー楽しかった」
そうやって笑うから泣きそうになるのをこらえ、わたしも笑みを作る。
楽しかったよ、ほんとに。
潤んでいる目を見せたくなくて顔を伏せながらわたしは味のないハンバーグにも手をつけた。