【完】隣の家のオオカミさん
おいしいんだか、おいしくないんだか分かんなくなっちゃった。
部屋の中に着信音が鳴り響く。
わたしのものではない。
大上くんはポケットから携帯を取り出すと耳に当てた。
数秒の会話が終わり、電話を終えた大上くんはこちらに顔を向けた気がした。
視線を感じてそっと顔を向ける。
「もう帰るわ。そのハンバーグちゃんと全部食べろよ。じゃな」
ひとつ笑顔を残して大上くんは帰って行った。
一緒にいると苦しくなって
いないと寂しくなって。
ただひとつ分かることは
わたしは大上くんを必要としている。
大上くんがいなきゃダメだ。
「やっぱ……おいしくないよ」
涙の味のハンバーグなんておいしくない。