【完】隣の家のオオカミさん
新しい自分、きみがいるこの世界
時間は止まらないし、自分の手で止めることもできない。
時の流れは早すぎるね。
寒さも和らいできた頃。
家近くを散歩するのがわたしの日課となっていた。
川沿いの遊歩道を音楽を聴きながらのんびり歩いたり、
公園のベンチに座って本を読んで時間が過ぎていくのを感じていた。
時間がもったいないとは思わない。
「……こんなに天気がいいと寝ちゃいそうだなぁ」
ケータイを手から離して頬を撫でていく風が気持ちよくて思わず目をつむってしまう。
春はもうすぐそこ。
コートは最近着なくなった。
厚手のニット一枚か、カーディガンを羽織るだけ。
首元がスースーして肩上で揺れる毛先に視線を落とす。
変わったことといえばわたしの髪が短くなったことぐらいかも。